次世代蓄電池・次世代モーターの開発

次世代蓄電池・次世代モーターの開発

プロジェクト概要

自動車の利用段階におけるCO2排出量は、グローバル、国内ともに、全体の16%を占めています。温暖化対策に向け、世界的に自動車の電動化の動きが加速しており、欧州や中国では、電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の普及が急速に拡大しています。また、各国で燃料電池トラック・バスの開発支援の取組が強化されています。我が国の経済の大黒柱である自動車産業の競争力の維持・強化のためには、電動化の取組を加速する必要があります。

電動車の普及に向けては、車両価格を低減すること等による社会的受容の拡大、充電インフラ・水素ステーション等のインフラ整備、蓄電池・燃料電池・モーター等の電動車関連技術・サプライチェーン・バリューチェーンの強化が課題となります。特に、軽自動車・商用車等ユーザーのコスト意識や車体設計上の制約が厳しい自動車の電動化については、小型・軽量な蓄電池・モーターの開発が必要となります。また、自動車のライフサイクルでの CO2削減の観点から、高効率なモーターの開発に加え、蓄電池やモーターの製造時・廃棄時の CO2削減も重要な課題となります。加えて、蓄電池やモーターには、リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛、ネオジム、ジスプロシウム等の資源が大量に使用されることとから、資源制約の克服の観点から、よりサプライチェーンリスクの低い材料の開発や、リサイクルの実現も課題です。

そこで本プロジェクトでは、①蓄電池やモーターシステムの性能向上・コスト低減、②材料レベルからの高性能化、省資源化、③高度なリサイクル技術の実用化に向け、技術的な課題の解決を図ることで、将来的な自動車の電動化を支える基盤技術や蓄電池・モーターの産業競争力の強化、サプライチェーン・バリューチェーンの強靱化を目指します。

プロジェクトの特徴

〇高性能蓄電池・材料の研究開発

①航続距離などに影響するエネルギー密度が現在の2倍以上(700~800Wh/L以上)の高容量系蓄電池(例:全固体電池)などの高性能蓄電池やその材料、②コバルトや黒鉛などの使用量低減を可能とする省資源材料、③材料の低炭素製造プロセスなどを開発します。

〇蓄電池のリサイクル関連技術開発

リチウムイオン蓄電池から、競争力のあるコスト、蓄電池材料として再利用可能な品質で、それぞれリチウム70%、ニッケル95%、コバルト95%以上を回収する技術を開発します。

〇モビリティ向けモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発

モーターシステムとして、高効率化(システム平均効率85%)や小型・軽量化・パワー向上(システムの出力密度3.0kW/kg)に向け、材料やモーター構造・インバータ・冷却技術等の革新技術を開発します。

プロジェクトサマリー

■予算額

上限1,510億円

■CO2の削減効果(ポテンシャル推計)

2040年
2.6億トン/年
2050年
9.4億トン/年

■経済波及効果(世界市場規模推計)

EV・PHEV の市場規模

2040年
62兆円
2050年
182兆円

■研究開発目標

①蓄電池分野

1. 高性能蓄電池・材料の研究開発
  • 2030年に、車載用として求められる性能・サイズ等の水準のパックで、①体積エネルギー密度700~800Wh/L以上となる蓄電池(例えば全固体電池)、又は②出力密度が2,000〜2,500W/kg以上、かつ、体積エネルギー密度が200~300Wh/L以上となる蓄電池の実現を見通せる技術やその実現に資する材料技術を開発
  • コバルト、黒鉛等の特定国依存度の高い材料の使用量を著しく低減することを可能とする材料技術、材料・部材製造時GHGを大幅に低減することを可能とする生産技術や高効率生産を可能とする生産技術を開発
2. 蓄電池のリサイクル関連技術開発
  • 概ね、市場価格(化合物・金属単体いずれかの価格)の1倍以下のコストで、蓄電池材料として再利用することを可能とする品質で、金属単体換算で、リチウム70%以上、ニッケル95%以上、コバルト95%以上を回収することを見据えることのできる技術を開発

②モーター分野

3.モビリティ向けモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発
  • 平均のモーターシステム効率として85%の実現を目指すと同時に、モーター単体で8.0kW/kg、モーターシステムとして3.0kW/kg の出力密度を目指す

【CO2削減効果の考え方】

  • 今回開発に取り組む蓄電池・モーターの実用化により、EV、PHEVの普及が加速し、IEAが示した2℃未満シナリオ(B2DS)に基づくペースで、EV、PHEVが普及する(2040年:EV 411百万台、PHEV 184百万台、2050年:EV 911百万台、PHEV 342百万台)と仮定
  • 2040年においては、EV、PHEVの普及台数の30%、2050年においては50%が本プロジェクトの成果を活用したEV、PHEVであると仮定し、これらすべてが ICE(Internal Combustion Engine)車からの代替とした場合のCO2削減効果を試算

【経済波及効果の考え方】

  • IEAが示した2℃未満シナリオ(B2DS)によるEV、PHEVの普及台数に基づき、事業成果が搭載された EV、PHEVの2040年、2050年の販売台数を上述の普及率を考慮して推計
  • 2040年、2050年におけるEV、PHEVの販売価格は200万円として試算

出所)研究開発・社会実装計画

プロジェクト実施者

【研究開発項目 1-(1)】高性能蓄電池・材料の研究開発

テーマ事業者
次世代全固体電池の開発
ASSB パイロットラインによる高性能・低 LCA バッテリ生産のプロセス確立
先進固体電池開発
次世代蓄電池の開発
次世代高容量高入出力リチウムイオン電池の開発
高容量全樹脂電池の開発
次世代蓄電池用高性能正極材料の開発と実証
次世代蓄電池向けリチウム金属負極生産技術開発
硫化物系固体電解質の量産技術開発
全固体電池用超高イオン伝導性ポリマーの開発

最新の事業戦略ビジョンをまとめてダウンロード

【研究開発項目 1-(2)】蓄電池のリサイクル関連技術開発

テーマ事業者
蓄電池リサイクルプロセスの開発と実証
クローズドループ・リサイクルによる車載 LiB 再資源化
リチウムイオン電池の低環境負荷型リサイクルプロセスの開発
低CO2リサイクルを実現するバッテリエコサイクルの構築

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【研究開発項目 2】モビリティ向けモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発

テーマ事業者
高効率電動化システム開発
モビリティ向けモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発
革新的な誘導モーター開発による低価格・省資源・高性能トラクションモーターの実用化
小型・軽量・省資源型、高効率電動アクスルの開発

最新の事業戦略ビジョンをまとめてダウンロード

※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。

次世代蓄電池・次世代モーターの開発2023年4月時点)

プロジェクトサマリー

  • 一部テーマに遅延が見られるものの、概ね計画通り進捗しており、引き続きモニタリングやステージゲートを通して継続的に進捗を確認する。

【研究開発項目1-1サマリー】

  • 「高性能蓄電池・材料の研究開発」では、要素技術開発や量産に向けた蓄電池設計、プロセス検討等を実施中。
  • 2022年度、2テーマを対象にステージゲート審査を実施し、所定の成果が認められたため次のフェーズへ移行する。

【研究開発項目1-2サマリー】

  • 「蓄電池のリサイクル関連技術開発」では、低コスト回収技術の開発やリサイクル技術のLCA検証等を実施中。
  • 2022年度、1テーマを対象にステージゲート審査を実施し、所定の成果が認められたため次のフェーズへ移行する。

【研究開発項目2サマリー】

  • 「モビリティ向けモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発」では、検証評価や要素技術開発、一部材料開発を実施中。
  • 2022年度、1テーマを対象にステージゲート審査を実施し、所定の成果が認められたため次のフェーズへ移行する。

スケジュール

1. NEDO報告資料

経済産業省産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会ワーキンググループにおけるNEDO報告はこちら。

2023年4月最新
2023年度 NEDO報告資料

2. 各事業者報告資料(事業戦略ビジョン)

各事業者の進捗状況はこちら。
実施体制・事業戦略ビジョン