
プロジェクト概要
水素は直接的に電力分野の脱炭素化に貢献するだけでなく、余剰電力などを水素に変換して貯蔵・利用することで、再生可能エネルギーなどのゼロエミッション電源のポテンシャルを最大限活用することもできます。このためカーボンニュートラル達成に必要不可欠な二次エネルギーとして期待されているほか、電化による脱炭素化が困難な産業分野(原料利用、熱需要)などの脱炭素化にも貢献します。
水素の社会実装を促すためには、供給設備の大型化による供給コストの削減と、大規模な水素需要の創出を同時に行う必要があります。しかし現状では長期の水素需要量が不確実なため、民間事業者が大規模なインフラ投資に踏み出しにくい問題があります。この不確実性を減らすためには既存のインフラを最大限活用しつつ、水素供給量の増大と水素需要の創出を行うことができる社会実装モデルを構築することが必要です。その一つの姿として、水電解装置の活用を中核とした、自家消費や周辺での水素利活用を行うモデルがあります。
この社会実装モデルの実現に向けて、本プロジェクトでは、国内での水素製造基盤の確立及び海外市場の獲得に向け、商用化に近い技術水準にあるアルカリ型水電解装置の設備コスト5.2 万円/kW、PEM 型水電解装置の設備コスト6.5 万円/kW を見通せる技術の実現を目指します。
プロジェクトの特徴
〇水電解装置の大型化技術等の開発、Power-to-X 大規模実証
2030 年までにアルカリ型水電解装置、PEM 型水電解装置の低コスト化を見通せる技術を実現するために、量産可能かつスケーラブルな特徴を備えた水電解装置の大型化・モジュール化に係る技術の開発、膜や触媒などの重要な部素材を水電解装置に実装する技術の開発、水電解装置を用いた産業プロセス等における化石燃料・原料等を水素で代替する最も効率的なシステム運用方法の開発を行います
〇水電解装置の性能評価技術の確立
アルカリ型水電解装置及びPEM 型水電解装置を対象とし、様々な運転条件下(再エネを模擬した出力変動、高圧運転)においてスタックの性能(効率、耐久性等)を評価する技術の開発を行います。
プロジェクトサマリー
■予算額
上限700億円
■CO2の削減効果(世界)
- 2030年
- 約0.4億トン/年
- 2050年
- 約15.2億トン/年
■経済波及効果(世界)
- 2030年
- 約0.4兆円
- 2050年
- 約4.4兆円
■研究開発目標
水電解装置 設備コスト
- 2030年
- アルカリ型5.2万円/kW
PEM型6.5万円/kW
【CO2削減効果及び経済波及効果の前提条件】
- 水電解によって製造された水素の主な利用先を熱需要と想定
- 石油や石炭等の他化石燃料よりもCO2排出量が低い輸入天然ガスの熱需要を水素が熱量等価で代替すると仮定
- 水素の製造量は以下の容量の水電解装置が独の国家水素戦略から算出される稼働率で稼働したと仮定して試算
2030年:70GW(水電解装置導入目標を掲げる主要国・地域の合算値)
2050年:年平均88GW/年の水電解装置が導入されると仮定 - 一社当たりの製造ボリュームが 100MW であり、10年間安定して動くシステムを前提
- 導入される水電解装置の平均設備単価をそれぞれ以下として経済波及効果を推計
2030年:5.85万円/kW
2050年:5万円/kW
出所)研究開発・社会実装計画
プロジェクト実施者
【研究開発項目 1】水電解装置の大型化技術等の開発、Power-to-X 大規模実証
- 水電解装置の大型化・モジュール化技術開発
- 優れた新部材の装置への実装技術開発
- 熱需要や産業プロセス等の脱炭素化実証
テーマ | 事業者 |
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大規模アルカリ型水電解装置の開発および、グリーンケミカルプラントの実証 |
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カーボンニュートラル実現へ向けた大規模P2Gシステムによるエネルギー需要転換・利用技術開発 |
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【研究開発項目 2】水電解装置の性能評価技術の確立
テーマ | 事業者 |
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再生可能エネルギーシステム環境下での水電解評価技術基盤構築 |
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※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。
再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造(2022年6月時点)
プロジェクトサマリー
- プロジェクト全体が、概ね計画通り進捗している。
【研究開発項目1サマリー】
「水電解装置の大型化技術等の開発、Power-to-X 大規模実証」については、パイロット試験設備や要素技術実装のための評価試験設備の構築の他、実証の候補地企業や自治体と協議を実施した。
【研究開発項目2サマリー】
「水電解装置の性能評価技術の確立」については、水電解メーカーへのヒアリング結果を基に評価設備の基本設計を行い、2022年3月に評価設備の建設に向けたステージゲート審査を実施し、通過した。
スケジュール
1. NEDO報告資料
経済産業省産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会ワーキンググループにおけるNEDO報告はこちら。
- 2022年6月最新
- 2022年度 NEDO報告資料
2. 各事業者報告資料(事業戦略ビジョン)
各事業者の進捗状況はこちら。
実施体制・事業戦略ビジョン