
プロジェクト概要
バイオものづくり技術を利用したカーボンリサイクルは、ゲノム編集、ゲノム構築等再先端のバイオ技術を適用することで、今後大幅な生産性の向上が期待できることから、カーボンニュートラル社会の実現に向けた有力な選択肢のひとつです。
バイオものづくりは、バイオマス資源や大気中等のCO2を原料として、バイオプラスチックや機能性素材等の化学品、燃料、タンパク質や飼料等の食品を生産する取組です。日本の産業分野でバイオものづくりに関連する化学、繊維、食品飲料の業界からは年間 8,901.7万トンのCO2が排出されており、これらの業種についてはバイオものづくり技術によるCO2排出削減への貢献が期待できます。
本プロジェクトでは、バイオものづくりの中核を担う微生物等改変プラットフォーム事業者と、革新的な素材や燃料等の異分野事業者との共同開発の促進等を通じて、大規模発酵生産とバイオものづくり製品の生産を担う製造事業者・事業会社の育成・強化を図ります。また、プラットフォーム事業者による高効率な微生物開発技術を活用することで微生物等が持つ CO2固定能力を最大限に引き出し、CO2を原料としたバイオものづくりによりカーボンリサイクルを推進するために必要となる各要素の技術的な課題の解決を図ります。さらに、原料のCO2供給から製品製造までのバリューチェーンを構築し、商用生産までのスケールアップや製造技術の高度化を推進することで、CO2を原料とした新しいバイオものづくり製品の社会実装とCO2の資源化による産業構造の変革を目指します。

プロジェクトの特徴
〇有用微生物等の開発を加速する微生物等改変プラットフォーム技術の高度化
バイオの基盤技術と IT・AI 等のデジタル技術やロボティクス等の自動化技術を統合した微生物等改変プラットフォーム技術の開発支援を行うことで、DBTLサイクル(D:デザイン、B:ビルド、T:テスト、L:ラーン)をより高速に回転させ、高効率に CO2を吸収・固定化し物質を生産する有用微生物の種類の拡大と、改変に要する時間・費用の低減に資することを目指します。
〇CO2を原料に物質生産できる有用な微生物等の開発・改良
バイオものづくりの中核を担う微生物等改変プラットフォーム事業者と革新的な素材や燃料等の異分野事業者との共同開発の促進等を通じて、製造しようとする特定の物質の種類ごとに、物質生産をするための代謝経路等が最適化されて、生産性が高められた微生物株を開発します。
〇CO2を原料に物質生産できる微生物等による製造技術等の開発・実証
CO2を炭素原料として使用して物質生産を行うために、炭素原料や還元力を用いる微生物株を培養する新たな培養方法の開発を行います。また、生産された物質を産業利用するためには、最終製品も念頭に置いた素材加工技術・品質評価手法の開発を行います。更に、物質生産実証の際には LCA( ライフサイクルアセスメント )評価手法の開発やCO2固定量の評価等の標準化にかかる開発も行います。
プロジェクトサマリー
■予算額
上限1,767億円
■CO2の削減効果(ポテンシャル推計)
- 2040年
- 約13.5億トン/年
- 2050年
- 約42.1億トン/年
■経済波及効果(世界市場規模推計)
- 2040年
- 約65.4兆円/年
- 2050年
- 約199.4兆円/年
■研究開発目標
- 2030年までに、DBTLサイクルの1サイクルあたりの時間を短縮するための技術を開発
- さらに、サイクル回数を削減しコストを低減する技術を確立し、有用微生物の開発期間を最大1/10程度に短縮する技術を確立

- 2030年までに、一般的な天然株と比較して物質生産機能またはCO2固定化能を5倍程度向上させ、商用レベルで物質生産できる微生物(商用株)を開発
- もしくは、既に物質生産機能またはCO2固定化能の高い微生物にゲノム編集等を行って生産機能等を保ちながら従来とは異なる原料・目的物質を利用可能な微生物(商用株)を開発
- 2030年までに、微生物等を用いて、CO2を原料として生産した物質の製造コストが、2030年時点の代替候補の製品の1.2倍以下となる技術を開発
【CO2削減効果の前提条件】
- CO2を原料としたバイオものづくり技術によりリーチしやすい市場(素材、繊維(化学繊維、動物性繊維)、燃料、食品、飼料)を対象に、2040年には20%、2050年には 50%が本プロジェクトの成果を活用した製品に代替すると仮定して、CO2削減効果を試算。各市場の推定消費量や生産量、プロセス転換によるCO2削減係数、原料としてのCO2吸収係数、計算式については研究開発・社会実装計画参照。
【経済波及効果の前提条件】
- CO2削減効果と同様の製品代替率を仮定、分野ごとの製品単価を以下の通り仮定し、経済効果を機械的に推計。
計算式:経済波及効果=(分野ごとの推定消費量)×(製品代替率)×(製品単価)
出所)研究開発・社会実装計画
プロジェクト実施者
【研究開発項目1】有用微生物の開発を加速する微生物等改変プラットフォーム技術の高度化
テーマ | 事業者 |
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CO2固定微生物利活用プラットフォームの構築 |
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【研究開発項目3】CO2を原料に物質生産できる微生物等による製造技術等の開発・実証
テーマ | 事業者 |
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CO2 を原料に物質生産できる微生物による製造技術等の開発・実証 |
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【研究開発項目2】CO2を原料に物質生産できる微生物等の開発・改良
【研究開発項目3】CO2を原料に物質生産できる微生物等による製造技術等の開発・実証
テーマ | 事業者 |
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バイオものづくり技術によるCO2を原料とした高付加価値化学品の製品化 |
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水素細菌によるCO2とH2を原料とする革新的なものづくり技術の開発 |
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【研究開発項目1】有用微生物の開発を加速する微生物等改変プラットフォーム技術の高度化
【研究開発項目2】CO2を原料に物質生産できる微生物等の開発・改良
【研究開発項目3】CO2を原料に物質生産できる微生物等による製造技術等の開発・実証
テーマ | 事業者 |
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CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発 |
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光合成によるCO2直接利用を基盤とした日本発グローバル産業構築 |
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※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。なお、大学や公的研究機関等については原則公表の対象ではない。