燃料アンモニアサプライチェーンの構築

燃料アンモニアサプライチェーンの構築

プロジェクト概要

アンモニアは、水素と同様に燃焼時にCO2を排出しないため、カーボンニュートラルの実現に向けて、発電や船舶などのゼロエミッション燃料として期待されています。特に発電用途では、化石燃料をアンモニアに代替することで火力発電の脱炭素化を進めることが重要です。また、アンモニアは、水素キャリアとしても利用可能で、既存のインフラを活用することで、安価に製造・輸送できることが特長です。こうした特性があることから、世界的に燃料としてのアンモニアへ注目が高まっており、今後、アジアを中心に燃料としての需要が急拡大していくことが見込まれます。

しかし、現状ではアンモニアは燃料用途で利用されていないため、アンモニアを燃料として活用する社会の実現にあたっては、アンモニアの利用拡大、安定供給確保、コスト低減といった課題があります。

そこで、本プロジェクトでは、これらの課題を解決するために、アンモニアの供給コストの低減に必要な技術を確立し、2030 年に10 円台後半/Nm3 (熱量等価での水素換算)への引き下げを目指します。また、アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化技術を確立し、2050 年の国内導入想定量である3000 万トン/年を実現することを目標とします。

プロジェクトの特徴

〇アンモニア供給コストの低減

既存のハーバー・ボッシュ法に劣らない効率でのアンモニア製造を実現しつつ、海外ライセンサーに依存しない生産体制を構築することを目指します。
また、再生可能エネルギーから水素を経由しないで直接アンモニアを製造する技術を開発します。

〇アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化

石炭火力発電におけるアンモニアの20%混焼をさらに発展させ、アンモニアの高混焼化・専焼化の技術開発を推進します。
また、石炭火力発電所をリプレースする需要も想定し、ガスタービンでのアンモニア専焼化に必要な技術開発も実施します。

プロジェクトサマリー

■予算額

上限688億円

■CO2の削減効果

2030年
615万トン/年(国内)
2050年
11.5億トン/年(世界)

■経済波及効果(世界市場)

2030年
0.75兆円
2050年
7.3兆円/年(※)
※ 2030年以降の累計額の平均により算出

■研究開発目標

  1. アンモニアの供給コストの低減(2030年10円台後半/Nm3
    ① アンモニア製造の運転コストを15%以上低減する合成技術の確立
    ② 最大製造可能量の9割以上製造を可能とするグリーンアンモニア電解合成技術の確立
  2. アンモニアの高混焼化・専焼化(2050年国内導入量3000万トン/年)
    ① 石炭火力発電における50%以上のアンモニア混焼技術の確立
    ② ガスタービン実機におけるアンモニア専焼技術の確立

【CO2削減効果の考え方】

  • 国内で2030年時点に、アンモニア300万トンを石炭火力発電に混焼することで削減できるCO2発生量
  • 2050年時点で、世界全体でアンモニア5.6億トンを石炭火力発電で専焼・混焼することで削減できるCO2発生量

【経済波及効果の考え方】

(2030年)

  • 混焼に向けた設備改造に石炭火力1基あたり約250億円程度要すると仮定
  • 石炭火力1基(100万kW)への20%混焼で年間約50万トンの燃料アンモニアが必要
    ⇒2030年時点での燃料アンモニア利用量300万トン(100万kW石炭火力で6基分相当)で、
    計1500億円(約0.15兆円)。
  • 海外でのアンモニア製造・輸出基地の建設で1基(100 万トン/年)あたり約 2000億円程度を要すると仮定
    ⇒2030年時点で燃料アンモニア300万トン(アンモニア製造・輸出基地で3基分相当)の供給で、
    計6000億円(約0.6兆円)。

(2050年)

  • 2050年断面での燃料アンモニア利用量は5.6億トンと想定。(2050年時点の世界の水素生産 (5.5億トン)の約2割が燃料アンモニアと想定し、アンモニア・トンに換算)
  • 2050年までに全ての燃料アンモニアが専焼利用となる
  • 専焼の設備改造に1基あたり約1500億円 程度を要すると仮定
    ⇒2050年時点で累計33.6兆円
  • 海外でのアンモニア製造・輸出基地の建設で1基(100万トン/年)あたり約2000億円程度を要すると仮定
    ⇒2050年時点では累計112兆円。
  • 以上を、2030年以降2050年までの世界の累計市場規模として、平準化したものが単年の市場規模

【研究開発目標の前提条件】

  • 「1.アンモニア供給コストの低減」における「2030年10円台後半/Nm3」は熱量等価で水素に換算したコスト(原料天然ガスの価格が、3~4USD/MMBtu)

出所)研究開発・社会実装計画

プロジェクト実施者

【研究開発項目 1】アンモニア供給コストの低減

  • アンモニア製造新触媒の開発・実証
  • グリーンアンモニア電解合成
テーマ事業者
燃料アンモニアサプライチェーン構築に係るアンモニア製造新触媒の開発・技術実証
常温、常圧下グリーンアンモニア製造技術の開発
  • 幹事出光興産株式会社
  • 国立大学法人東京大学
    公開対象外※
  • 国立大学法人東京工業大学
    公開対象外※
  • 国立大学法人大阪大学
    公開対象外※
  • 国立大学法人九州大学
    公開対象外※

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【研究開発項目 2】アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化

  • 石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術(専焼技術含む)の開発・実証
  • ガスタービンにおけるアンモニア専焼技術の開発・実証
テーマ事業者
事業用火力発電所におけるアンモニア高混焼化技術確立のための実機実証研究
アンモニア専焼バーナを活用した火力発電所における高混焼実機実証
アンモニア専焼ガスタービンの研究開発
  • 幹事株式会社 IHI
  • 国立大学法人東北大学
    公開対象外※
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所
    公開対象外※

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※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。なお、大学や公的研究機関等については原則公表の対象ではない。

燃料アンモニアサプライチェーンの構築2022年12月時点)

プロジェクトサマリー

  • プロジェクト全体が、概ね計画通り進捗している。ただし、「アンモニア供給コストの低減に必要な技術の確立」は 100年以上の歴史を持つ現在の製造方法に代わる新たな挑戦であり、技術確立までは時間を要する見込みであることから、モニタリングを通じた進捗の継続確認が必要である。

【研究開発項目1サマリー】

「アンモニア供給コストの低減に必要な技術の確立」では、要素技術の開発レベルであるため、要素データ取得・確認をしながら、計画に基づいて研究開発を実施した。

【研究開発項目2サマリー】

「アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化」では、実機実証に向けて、必要な基礎データの取得・検討を進めており、計画通りに推進中である。

スケジュール

1. NEDO報告資料

経済産業省産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会ワーキンググループにおけるNEDO報告はこちら。

2022年12月最新
2022年度 NEDO報告資料

2. 各事業者報告資料(事業戦略ビジョン)

各事業者の進捗状況はこちら。
実施体制・事業戦略ビジョン