
プロジェクト概要
カーボンニュートラルは、製造・サービス・輸送・インフラなど、あらゆる分野で電化・デジタル化が進んだ社会によって実現されます。このため、電化・デジタル化の基盤である、半導体・情報通信産業は、グリーンとデジタルを同時に進める上での鍵となります。
中でも、パワー半導体は自動車・産業機器、電力・鉄道、家電など、生活に関わる様々な電気機器の制御に使用されており、カーボンニュートラルに向けた電化社会にとって、こうした電気機器の省電力化は極めて重要であり、特に使用電力容量が①中容量帯では自動車の電動化、②大容量帯では再エネ等の電力系統、③小容量帯ではデータセンター用電源として、電化・デジタル化に伴う需要の増加が予想されます。
また、世界のデータ量は年間約 30%のペースで急増しており、それに伴いデータセンターサーバの市場規模は拡大の一途を辿っています。今後、大規模データセンターの急増により、データセンター全体の電力消費量も増加に転じることが予想され、これまでの技術進化では、電力消費量の増加に追いつかないと予想されます。
そこで本プロジェクトは2030 年までに50%以上の損失低減と従来の Si パワー半導体と同等のコストを達成する次世代パワー半導体の開発や、現在のデータセンターと比較して 40%以上の省エネ化を実現するデータセンターの開発等を行います。

プロジェクトの特徴
〇次世代グリーンパワー半導体開発
電動車、再エネなど電力、サーバ電源等、カーボンニュートラルに向けて革新的な省エネ化が必要な分野において、次世代パワー半導体(SiC、GaN等)を使った変換器などの50%以上の損失低減と社会実装を促進するためのSiパワー半導体と同等のコスト実現に向けた低コスト化に取り組みます。
〇次世代グリーンデータセンター技術開発
サーバ内等の電気配線を光配線化する革新的な光電融合技術等により、データ集約拠点であるデータセンターの40%以上の大幅な省エネ化を目指します。
プロジェクトサマリー
■予算額
上限1,410億円
■CO2の削減効果(世界)
- 2030年
- 17,560万トン/年
- 2050年
- 44,900万トン/年
■経済波及効果(世界市場)
- 2030年
- 約19.0兆円
- 2050年
- 約88.0兆円
■研究開発目標
- 次世代パワー半導体を使った変換器などの損失を50%以上低減及び量産時に従来のSiパワー半導体と同等のコストを達成
- 8インチ(200mm)SiCウェハにおける欠陥密度1桁以上の削減及びコスト低減
- 研究開発開始時点で普及しているデータセンターと比較して40%以上の省エネ化を実現
【CO2削減効果の前提条件】
[パワー半導体]
<電動車関連>
- 電動車のCO2排出量と日本の自動車の平均走行距離を元に、1台あたりの年間のCO2排出量を算出
- 2030年時点の電動車の普及率を50%、2050年は100%として算出
- 電動車の損失割合を20%、本プロジェクトによる損失改善効果を50%として削減量を算出
<再エネ等電力関連>
- 洋上風力により発電された電力が、火力により発電された電力を代替して、送電に使用される電力変換器の損失が低減すると仮定
- 2030年国内の洋上風力の導入量を1.68~3.68GW、2050年を45GW、世界の導入量としては2030年は234GW、2050年は1,400GWとした
- 設備利用率(33.2%)及び火力平均の電力排出係数(0.66kg・CO2/kWh)はGI基金事業の「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトと同等の値を使用
- 現行の半導体変換器による損失は2%と仮定し、本プロジェクトによる損失低減効果を50%としてCO2削減量を算出
<サーバ電源関連>
- 2019年の世界及び国内のデータセンターの消費電力量から増加分を考慮すると、2030年、2050年の消費電力はそれぞれ下表の通り
表 世界及び国内のデータセンター消費電力量(TWh) 2019年 2030年 2050年 国内 14 18 43 世界 200 252 612 - 消費エネルギーのうち電源が占める損失は25%、本プロジェクトによる損失低減効果を50%としてCO2削減量を算出
[次世代グリーンデータセンター]
- データセンターによる省電力化を40%とし、省電力化技術の普及率を2030年で40%、2050年で100%と仮定
- 省電力化により削減された電力量の発電におけるCO2排出量が削減されると仮定
【経済波及効果の前提条件】
[パワー半導体]
- 2020年のパワー半導体市場全体を約3.2兆円、2030年には約5兆円としてCAGR(年平均成長率)を計算し、2050年の市場規模を推定
- 2050年にかけて平均的なCAGRとして10%程度を仮定して2050年の市場規模を推定
[次世代グリーンデータセンター]
- データセンターシステムの投資額は、2019年に世界 214,902百万米ドル、国内12,056百万米ドルであり、2025年には世界271,579百万米ドル(CAGR4%)、国内 13,198百万米ドル(CAGR1.5%)と推計されている
- 世界CAGR4%、国内CAGR1.5%のまま成長すると仮定
出所)研究開発・社会実装計画
プロジェクト実施者
【研究開発項目 1】次世代パワー半導体デバイス製造技術開発
テーマ | 事業者 |
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8インチ次世代 SiC MOSFET の開発 |
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次世代高耐圧電力変換器向け SiC モジュールの開発 |
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次世代パワー半導体デバイス製造技術開発(電動車向け) |
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次世代高電力密度産業用電源(サーバ・テレコム・FA 等)向けGaN パワーデバイスの開発 |
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【研究開発項目 2】次世代パワー半導体に用いるウェハ技術開発
テーマ | 事業者 |
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超高品質・8 インチ・低コスト SiC ウェハ開発 |
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高品質 8 インチ SiC 単結晶/ウェハの製造技術開発 |
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次世代グリーンパワー半導体に用いる SiC ウェハ技術開発 |
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【研究開発項目 3】次世代グリーンデータセンター技術開発
テーマ | 事業者 |
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・光エレクトロニクス技術の開発(光電融合デバイス開発、光スマート NIC 開発) ・光に適合したチップ等の高性能化・省エネ化技術の開発(省電力 CPU 開発、省電力アクセラレータ開発、広帯域 SSD 開発) ・ディスアグリゲーション技術の開発 |
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光に適合したチップ等の高性能化・省エネ化技術の開発(不揮発メモリ開発) |
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※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。
次世代デジタルインフラの構築(2023年3月時点)
プロジェクトサマリー
- プロジェクト全体が概ね計画通り進捗しており、モニタリングやステージゲートを通じて継続的に進捗を確認する。
- 次世代グリーンデータセンター技術開発のうち「省電力アクセラレーターの開発」については、実施者から中止の申し出があり、「研究開発開始時点で予測することのできない事由」及び「実施者の責任によらない事情」に該当すると認められたため中止している。
【研究開発項目1、2(パワー半導体分野)サマリー】
- デバイス製造技術開発、ウェハ技術開発のいずれも、要素技術の開発を進め、研究開発に必要な設備仕様等を決定し、手配を概ね完了させるなど、計画通り研究開発を推進している。
- 各種評価や先行検証試作、プロセスインフォマティクス、CAE(Computer-Aided Engineering)等にて、マイルストーンの達成見通しを確認している。
【研究開発項目3(グリーンデータセンター分野)サマリー】
- 各要素技術の仕様検討がすすみ、試作品手配の準備が完了されるなど、計画通りに研究開発を推進している。また、実施者間でシステム実証に向けた検討が開始され、コンポーネント間の相互接続に向けた仕様を検討中である。
- 技術調査や試作に向けた仕様検討、設計手配、ファウンドリー手配、評価方法検討等において、研究マイルストーン達成の見通しを確認している。
スケジュール
1. NEDO報告資料
経済産業省産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会ワーキンググループにおけるNEDO報告はこちら。
- 2023年3月最新
- 2022年度 NEDO報告資料
2. 各事業者報告資料(事業戦略ビジョン)
各事業者の進捗状況はこちら。
実施体制・事業戦略ビジョン