
プロジェクト概要
水素は直接的に電力分野の脱炭素化に貢献するだけでなく、余剰電力などを水素に変換して貯蔵・利用することで、再生可能エネルギーなどのゼロエミッション電源のポテンシャルを最大限活用することもできます。このためカーボンニュートラル達成に必要不可欠な二次エネルギーとして期待されているほか、電化による脱炭素化が困難な産業分野(原料利用、熱需要)などの脱炭素化にも貢献します。
水素の社会実装を促すためには、供給設備の大型化による供給コストの削減と、大規模な水素需要の創出を同時に行う必要があります。しかし現状では長期の水素需要量が不確実なため、民間事業者が大規模なインフラ投資に踏み出しにくい問題があります。この不確実性を減らすためには既存のインフラを最大限活用しつつ、水素供給量の増大と水素需要の創出を行うことができる社会実装モデルを構築することが必要です。
そこで本プロジェクトでは、水素運搬船を含む輸送設備の大型化等とともに、水素発電の実機実証(混焼・専焼)等を実施することで、水素の大規模需要の創出とともに供給コスト低減を可能とする技術を確立し、2030年に水素供給コスト30円/Nm3、2050年20円/Nm3以下(化石燃料と同程度)の達成を目指します。
プロジェクトの特徴
〇大規模水素サプライチェーンの実証、革新的水素輸送技術の開発
化石燃料に十分な競争力を有する水準(20円/Nm3以下)の水素供給コストを達成するために、水素キャリアである液化水素およびMCH(メチルシクロヘキサン)による大規模水素サプライチェーン構築のための商用化事業及び水素供給コストの低減に資する革新的液化技術・直接MCH電解合成技術の開発を行います。
〇液化水素関連機器の研究開発を支える材料評価基盤の整備
液化水素の製造、輸送・貯蔵、利用に関わる機器等の低コスト化を実現するために、材料の機械特性などを統一的に評価する上で基盤となる設備の整備を行います。
〇水素発電技術の実機実証
大規模需要を創出する水素ガスタービン発電技術を2030年までに商用化するために、これまでの事業で開発された燃焼器などを実際の発電所に実装して、異なる実証運転を行うことで、燃焼安定性などの検証を行います。
プロジェクトサマリー
■予算額
上限3,000億円
■CO2の削減効果(世界)
- 2030年
- 約700万トン/年
- 2050年
- 約4億トン/年
■経済波及効果(世界)
- 2030年
- 約0.3兆円
- 2050年
- 約5.5兆円
■研究開発目標
水素供給コスト
- 2030年
- 30円/Nm3
- 2050年
- 20円/Nm3
【CO2削減効果及び経済波及効果の前提条件】
- 国際水素サプライチェーンからの水素供給量として100万トン(2030年)、世界の水素取引量として5,500万トン(2050年)という推計値を採用
- 国際水素サプライチェーンによって供給された水素の利用先を水素発電と想定
- 石油や石炭等の他化石燃料よりもCO2排出量が低い輸入天然ガスと熱量等価で代替すると仮定
- 平均水素供給コストを30円/Nm3(2030年)、100円/kg(2050年)として経済波及効果を試算
出所)研究開発・社会実装計画
研究開発目標
(参考)液化水素供給コスト内訳
出所)第25回 水素・燃料電池戦略協議会
プロジェクト実施者
【研究開発項目 1】国際水素サプライチェーン技術の確立及び液化水素関連機器の評価基盤の整備
- 水素輸送技術等の大型化・高効率化技術開発・実証
- 液化水素関連材料評価基盤の整備
- 革新的な液化、水素化、脱水素技術の開発
テーマ | 事業者 |
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液化水素サプライチェーンの商用化実証 |
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MCH サプライチェーン実証 |
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液化水素関連機器の研究開発を支える材料評価基盤の整備 |
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水素液化機向け大型高効率機器の開発 |
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直接MCH電解合成(Direct MCH)技術開発 |
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【研究開発項目 2】水素発電技術(混焼、専焼)を実現するための技術の確立
- 水素発電技術(混焼、専焼)の実機実証
テーマ | 事業者 |
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大規模水素サプライチェーン構築に係る水素 混焼発電の技術検証 |
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既設火力発電所を活用した水素混焼/専焼発電実証 |
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CO2フリー水素発電実証 |
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※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。
大規模水素サプライチェーンの構築(2023年2月時点)
プロジェクトサマリー
- 一部テーマについては遅れが生じているものの、プロジェクト全体としては概ね計画通り進捗している。
- FSに基づき、実証やその先の社会実装に向けた計画見直しを図るとともに、事業計画への影響を最小限にするため、モニタリングやステージゲートを通じて継続的に進捗を確認する。
【研究開発項目1サマリー】
- 「国際水素サプライチェーン技術の確立及び液化水素関連機器の評価基盤の整備」では、資材・部品調達期間の長期化やウクライナ情勢を踏まえたエネルギーセキュリティ強化に係る追加検討等のため一部テーマについて進捗に遅れが生じているものの、実証設備検討に向けた候補地選定や技術的な検討を進めるなど、概ね計画通り進捗している。
- 「液化水素関連機器の研究開発を支える材料評価基盤の整備」については、評価試験設備の仕様・構成等に係る詳細設計が完了し、ステージゲート審査を通過しており、今後は設備建設のステージに移行する。
【研究開発項目2サマリー】
- 「水素発電技術(混焼、専焼)を実現するための技術の確立」では、一部テーマについて技術的な課題による進捗の遅れが生じているものの、水素発電実証に向けて、必要水素確保の検討、必要関連設備の検討、技術課題の確認と対応策、実証場所の選定、許認可の必要性確認などを進め、概ね計画通り進捗している。
スケジュール
1. NEDO報告資料
経済産業省産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会ワーキンググループにおけるNEDO報告はこちら。
- 2023年2月最新
- 2022年度 NEDO報告資料
2. 各事業者報告資料(事業戦略ビジョン)
各事業者の進捗状況はこちら。
実施体制・事業戦略ビジョン