CO2の分離回収等技術開発

CO2の分離回収等技術開発

プロジェクト概要

電力部門の脱炭素化に向けては、再生可能エネルギーを最大限導入する方向性ですが、国内の電力需要をカバーするためには、火力発電を一定容量確保し、排出される CO2 を回収する必要があります。
他方、産業部門の脱炭素化に向けては、電化や水素等への燃料転換が進展しますが、コストの影響等により、化石燃料需要は一定程度残存すると予想されます。また、セメント、製鉄、化学等の産業部門では原料由来の CO2 排出が避けられません。
このように、電力部門・産業部門の双方において CO2 分離回収技術の必要性が高まっていますが、①分離回収のために多くのエネルギー投入が必要、②設備コスト・回収素材コスト等が高い、といった課題があります。

本プロジェクトでは、世界に先駆けて、CO2濃度 10%以下の低圧・低濃度の CO2分離回収技術を確立し、CO2 分離回収設備・素材ビジネスの拡大に加えて、カーボンリサイクル市場における我が国の国際競争力を強化するとともに、DAC(直接空気回収)等のネガティブエミッション技術の開発にもその成果を繋げていくことを目指します。

プロジェクトの特徴

①天然ガス火力発電排ガスからの大規模CO2分離回収技術開発・実証

大規模な天然ガス火力発電からの排ガスを対象とし、2030年2,000円台/ton-CO2以下のCO2分離回収コストを実現するための技術開発から、プラントにおける実ガス実証(10ton/day以上)による当該目標の達成状況の確認までを実施します。

②工場排ガス等からの中小規模CO2分離回収技術開発・実証

コージェネレーションシステム、ボイラ、加熱処理炉からの排ガスを対象とし、それぞれについて2030年2,000円台/ton-CO2以下のCO2分離回収コストを実現するための技術開発から、それぞれの工場における実ガス実証(0.5ton/day以上)による当該目標の達成状況の確認までを実施します。

③CO2分離素材の標準評価共通基盤の確立

低圧・低濃度排ガスに対して分離素材の開発を加速するため、実ガスを用いたCO2分離回収標準評価基盤を確立します。具体的には、(1) 素材メーカとエンジニアリング会社との連携体制を構築した上でのデータの取得・集積、 (2)標準ガス及び実ガスを用いた標準的な性能評価手法の策定、 (3)標準評価手法で得られたデータを用いて、システム解析等により CO2分離回収コストの評価を行う手法の開発、(4) 加速劣化システムやシミュレーション技術を用いた耐久性評価手法の開発、(5) (2)~(4)で開発した評価手法の国際標準化、を目指します。

プロジェクトサマリー

■予算額

上限382.3億円

■CO2の削減効果(ポテンシャル推計)

2030年
16億トン-CO2/年
2050年
80億トン-CO2/年

■経済波及効果
(CO2分離回収に係る世界市場規模推計)

2030年
6兆円/年
2050年
10兆円/年

■研究開発目標

2030年:低圧・低濃度ガス(大気圧、CO2濃度10%以下)に対して、2,000円台/トン-CO2以下のCO2分離回収コストを実現

【CO2削減効果及び経済波及効果の前提条件】

<CO2削減効果>

  • 2030年:IEA[Beyond 2℃シナリオ]にて、 2030年の分離回収・貯蔵量を約16億トンと予測。
  • 2050年:IEA[Beyond 2℃シナリオ]にて、 2050年の分離回収量・貯蔵量を約80億トンと予測。

<経済波及効果>

  • 2050年:約1,200 円/トン-CO2(分離回収コスト目標・予測)×約80億トン-CO2(IEA Energy Technology Perspectives 2017のBeyond 2 ℃シナリオにおける分離回収量)

出所)研究開発・社会実装計画

プロジェクト実施者

【研究開発項目】低圧・低濃度 CO2分離回収の低コスト化技術開発・実証

  • 天然ガス火力発電排ガスからの大規模 CO2分離回収技術開発・実証
  • 工場排ガス等からの中小規模 CO2分離回収技術開発・実証
  • CO2分離素材の標準評価共通基盤の確立
テーマ事業者
天然ガス燃焼排ガスからの低コスト CO2分離・回収プロセス商用化の実現
低濃度・分散排出源CO2の分離回収技術開発
革新的分離剤による低濃度 CO2分離システムの開発
分離膜を用いた工場排ガス等からの CO2分離回収システムの開発
Na-Fe 系酸化物による革新的 CO2分離回収技術の開発
LNG 未利用冷熱を活用した CO2分離回収技術開発・実証
  • 幹事東邦瓦斯株式会社
  • 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
    公開対象外※
CO2分離素材の標準評価共通基盤の確立

最新の事業戦略ビジョンをまとめてダウンロード

※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。なお、大学や公的研究機関等については原則公表の対象ではないが、単独実施の研究機関等についてはこの限りではない。

CO2の分離回収等技術開発2023年4月時点)

プロジェクトサマリー

  • 半導体不足による設備の納入遅れなどがあるものの、プロジェクト全体としては、概ね計画通りに進捗している。
  • 本GI基金プロジェクトでは、他GI基金事業と異なり、多様な業界に対して成果を実装していくことが重要となる。その観点から、ビジネスモデルやルール作りに造詣の深い専門家を交え、案件毎にビジネスモデル検討会を実施した。

【研究開発内容1サマリー】

  • 「天然ガス火力発電排ガスからの大規模CO2分離回収技術開発・実証」では、新規固体吸収材の開発を実施中。目標吸収性能が得られる吸収材候補を見出し、吸収材に基づくプロセス検討を実施中。

【研究開発内容2サマリー】

  • 「工場排ガス等からの中小規模CO2分離回収技術開発・実証」では、CO2分離回収のコア技術である回収材の性能向上の技術開発を実施中。各案件において、回収材の性能向上を確認した。

【研究開発内容3サマリー】

  • 「CO2分離素材の標準評価共通基盤の確立」では、プロジェクト推進協議会を2022年度に2回開催した。当該協議会は、標準評価法の評価対象や評価項目等について外部委員から意見を求めることを目的として実施した。当該協議会にて、標準評価法の策定に向け、各研究開発内容について実施者から説明を行い、各委員から質問や意見を伺った。

スケジュール

1. NEDO報告資料

経済産業省産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会ワーキンググループにおけるNEDO報告はこちら。

2023年4月最新
2023年度 NEDO報告資料

2. 各事業者報告資料(事業戦略ビジョン)

各事業者の進捗状況はこちら。
実施体制・事業戦略ビジョン