
プロジェクト概要
2050年カーボンニュートラルの実現のためには、燃焼しても大気中にCO2が増加せず、化石燃料の代替となる燃料の実用化が鍵になります。
これらの燃料は、海外の化石燃料に依存する我が国のエネルギー需給構造に変革をもたらす可能性があり、エネルギー安全保障の観点からも重要です。既存インフラを活用することで導入コストを抑えられるメリットが大きく、製造技術に関する課題を解決し製造コストを下げることで、社会実装を目指します。
脱炭素社会の実現に向けた多様な選択肢の一つとして、カーボンリサイクル燃料の技術開発を促進することが必要であり、本プロジェクトでは、液体燃料として①合成燃料、②持続可能な航空燃料(SAF)を、気体燃料として③合成メタン、④グリーンLPGについて、社会実装に向けた取組を行います。
プロジェクトの特徴
〇合成燃料の製造収率、利用技術向上に係る技術開発
液体燃料収率の向上のための技術開発として、CO2と水素から高効率・大規模に合成燃料を製造する一貫製造プロセスの開発を実施します。2040年までの自立商用化を目指し、2030年までにパイロットスケール(300B/日規模を想定)で液体燃料収率80%を実現します。
〇持続可能な航空燃料(SAF)製造に係る技術開発
大規模な生産量(数十万kL)を見込めるエタノールからSAFを製造するATJ技術(Alcohol to JET)を確立します。2030年までの航空機への燃料搭載を目指し、液体燃料収率50%以上かつ製造コストを100円台/Lを実現します。
〇合成メタン製造に係る革新的技術開発
再エネ電力等から製造した水素と、発電所等から回収したCO2から効率的にメタンを合成する技術(メタネーション)を確立します。2030年度までに、エネルギー変換効率60%以上を実現します。
〇化石燃料によらないグリーンなLPガス合成技術の開発
水素と一酸化炭素から、メタノール、ジメチルエーテル経由で合成される、化石燃料によらないLPガス(グリーンLPG)の合成技術を確立します。2030年度までに生成率50%となる合成技術を確立し、商用化を目指します。
プロジェクトサマリー
■予算額
上限1,152.8億円
■CO2の削減効果(ポテンシャル推計)
1. 液体燃料(輸送用燃料)
2050年 約1.2億トン/年
2050年 約5,233万トン/年
2.気体燃料(産業用・家庭用)
2050年 約8,000万トン/年
2050年 約6,450万トン/年
■経済波及効果
1. 液体燃料(輸送用燃料)
2050年 約2.3兆円/年
2. 気体燃料(産業用・家庭用)
2050年 約1.8兆円/年
2050年 約5.9兆円/年
■研究開発目標
(i)合成燃料
●液体燃料収率の向上
2028年:
パイロットスケールで
液体燃料収率80%を達成

2027年:
・乗用車の燃料利用段階で
CO2排出量を半減する技術の確立
・大型車の正味熱効率55%以上を
実現する技術の確立

2030 年:航空機への燃料搭載
(液体燃料収率50%以上かつ製造コスト100 円台/Lの実現)
(iii)合成メタン
2030 年度:総合的エネルギー変換効率 60%超を実現
(iv)グリーン LPG
2030年:化石燃料によらないLPガス1,000トン/年以上の商用化(生成率30%から50%の合成技術の確立)
【CO2削減効果及び経済波及効果の前提条件】
<CO2削減効果>
1. 液体燃料(輸送用燃料)
(i)合成燃料
- 2030年:300BPDプラントを1年間稼働して製造される合成燃料のすべてを軽油の代替とした場合のCO₂削減量。
- 2050年:ガソリン需要が2021年以降年率2.4%、軽油需要が2021年以降年率0.4%で減少すると仮定して算出されるガソリン及び軽油の需要をすべて合成燃料で代替した場合のCO₂削減量。
(ii)持続可能な航空燃料(SAF)
- 2030年:国際航空のCO2排出削減枠組みであるCORSIAへの対応の対象となる、国内空港から発つ本邦及び外航航空会社の利用分で試算。
- 2050年:日本の航空会社の国内線・国際線利用分における試算。
2. 気体燃料(産業用・家庭用)
(iii)合成メタン
- 2030年:都市ガス需要の1%をメタネーションで代替すると仮定。都市ガス需要は2019年度実績を利用。
- 2050年:都市ガス需要の90%をメタネーションで代替すると仮定。都市ガス需要は2019年度実績を利用。
(iv)グリーンLPG
- 2030 年:商用化されるグリーンLPガスの生産量は1,000トン/年。LPガスは燃焼時に3倍のCO2を排出するとして試算。
- 2050 年:国内LPガス需要800万トン/年をグリーンLPガスに代替、さらにアジア市場で1,350万トン/年のグリーンLPガス需要見込から試算。
<経済波及効果>
1. 液体燃料(輸送用燃料)
(i)合成燃料
- 2050年:燃料の流通では、ガソリン・軽油需要をすべて合成燃料で代替すると仮定。燃料製造設備では、ガソリン・軽油需要を賄うことができる設備の建設に2040年以降本格的に取組んでいくことを想定。
(ii)持続可能な航空燃料(SAF)
- 2030年:国際航空のCO2排出削減枠組みであるCORSIAへの対応の対象となる、国内空港から発つ本邦及び外航航空会社の利用分で試算。
- 2050年:日本の航空会社の国内線・国際線利用分における試算。
2. 気体燃料(産業用・家庭用)
(iii)合成メタン
- 2030年:国内都市ガス需要の1%分が合成メタンに置き換わると仮定し、2050年の合成メタンの価格目標50円/Nm3として推計。
- 2050年:国内都市ガス需要の90%分が合成メタンに置き換わると仮定し、2050年の合成メタンの価格目標50円/Nm3として推計。
(iv)グリーンLPG
- 2030年:LPガスが約1,000トン市場に導入された場合の市場規模から推計。
- 2050年:LPガス需要が全てグリーンLPガスに代替された場合の国内市場規模と、アジア市場でのグリーンLPガス需要量から推計。
出所)令和4年1月20日付け 研究開発・社会実装計画
プロジェクト実施者
○液体燃料(輸送用燃料)-合成燃料
【研究開発項目1-①】液体燃料収率の向上に係る技術開発
テーマ | 事業者 |
---|---|
CO2 からの合成反応を用いた高効率な液体燃料製造技術の開発 |
|
【研究開発項目 1-② 】燃料利用技術の向上に係る技術開発
テーマ | 事業者 |
---|---|
乗用車および重量車の合成燃料利用効率の向上とその背反事象の改善に関する技術開発 |
|
○液体燃料(輸送用燃料)-持続可能な航空燃料(SAF)
【研究開発項目 2】持続可能な航空燃料(SAF)製造に係る技術開発
テーマ | 事業者 |
---|---|
最先端の ATJ(Alcohol to Jet)プロセス技術を用いた ATJ 実証設備の開発と展開 |
|
〇気体燃料(産業用・家庭用)ー合成メタン
【研究開発項目 3】合成メタン製造に係る革新的技術開発
テーマ | 事業者 |
---|---|
SOEC メタネーション技術革新事業 |
|
低温プロセスによる革新的メタン製造技術開発 |
|
〇グリーン LPG
【研究開発項目 4】化石燃料によらないグリーンな LP ガス合成技術の開発
テーマ | 事業者 |
---|---|
革新的触媒・プロセスによるグリーンLP ガスの合成技術の開発・実証 |
|
※事業戦略ビジョン:本プロジェクトに参画する企業等の経営者がコミットメントを示すため、事業戦略や事業計画、研究開発計画、イノベーション推進体制などの詳細を明らかにした資料。なお、大学や公的研究機関等については原則公表の対象ではない。
CO2等を用いた燃料製造技術開発(2023年6月時点)
プロジェクトサマリー
- 概ね計画通りに進捗している。
- 事業化に向けては、部門間の連携体制を構築し、標準化戦略も含めたビジネスモデル検討が進行中。
【研究開発項目1ー①サマリー】
- 「液体燃料収率の向上に係る技術開発」では、要素技術開発であるFT触媒改良及びFTリアクター設計について計画通りに進捗している。
- 実証試験に向け、1BPDベンチプラントに関するプロセスの設計およびプロットプランの策定を進め、300BPDパイロットプラントに関するプロセス基本設計に着手し、機器設計へ順次反映中。
【研究開発項目1ー②サマリー】
- 「燃料利用技術の向上に係る技術開発」では、熱効率目標を達成するエンジンのコンセプトスタディをおこない、エンジンスペックを明確にした。
- 各要素技術を搭載した車両のWLTCモード走行シミュレーションを実施し、現在計画されているアイテムの組合せによりステージゲート目標の達成見込みを確認した。今後は、単気筒エンジン実験等による効果検証を進める。
【研究開発項目2サマリー】
- 「持続可能な航空燃料(SAF)製造に係る技術開発」では、エタノールからのエチレン収率向上のための脱水反応プロセスの最適化、副⽣廃⽔の処理技術の開発および、エチレンからのジェット燃料油の収率向上のための反応条件の最適化に関する検討について、計画通りに進捗している。
【研究開発項目3サマリー】
- 「合成メタン製造に係る革新的技術開発」では、計画通りに、要素技術開発においてデータ取得を進め、システム化検討のための小規模試験設備の基本設計に着手した。
【研究開発項目4サマリー】
- 「化石燃料によらないグリーンなLPガス合成技術の開発」では、触媒の開発と性能評価について、LPG合成効率50%以上を実現する触媒開発の目処がほぼついた。
- グリーンLPガス合成プロセスの開発では、CO/H2をバイオガスから得て合成するプロセスの概念設計に着手した。
- 社会実装に向けた実証試験に向けて、サプライチェーン構築のために、原料提供者、製品流通者と連携する契約を締結した。
スケジュール
1. NEDO報告資料
経済産業省産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会ワーキンググループにおけるNEDO報告はこちら。
- 2023年6月最新
- 2023年度 NEDO報告資料
2. 各事業者報告資料(事業戦略ビジョン)
各事業者の進捗状況はこちら。
実施体制・事業戦略ビジョン