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2026.10.15
産業構造転換分野インタビュー

ブルーカーボン実証実験が新段階、藻場保全・回復進む

藻場の広がりを対馬・豊漁港で計測、CO2吸収量を算出

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昨今、藻場の減少が大きな問題となっています。この藻場の保全・回復を通じてカーボンニュートラルに挑んでいるのが、NEDOが「グリーンイノベーション(GI)基金事業/食料・農林水産業のCO2等削減・吸収技術の開発」プロジェクトの一環で推進している「漁港を利活用した海藻バンクによるブルーカーボン生態系拡大プロジェクト」です。2026年5月に長崎県対馬市の豊(とよ)漁港の実海域で藻場が回復している姿を確認し、藻場の量と海藻の種類を計測しました。計測によってCO2吸収量をデータとして科学的に算出することができます。

2026年5月に長崎県対馬市にある豊(とよ)漁港で実施した藻場の量の計測。仕切り網で囲われた海域の外側と内側で、藻場の回復状況を計測

このプロジェクトは、藻場が主に光合成によって吸収したCO2を海洋の生態系に貯留させる仕組み(「ブルーカーボン*1」)を通じ、CO2の削減に貢献する取り組みで、NEDOおよび水産庁連携のもと、「海藻バンクコンソーシアム(以下、KAISO BANK)」が主導して推進しています。

  • *1 一般的に、ブルーカーボンとは海洋における海藻、海草、マングローブ、植物プランクトンなどの海洋生態系が光合成によって吸収した炭素のことを指します。森林が吸収する炭素をグリーンカーボンと呼ぶのに対し、海中で吸収・貯留される炭素をブルーカーボンと呼びます。今回、KAISO BANKが目指しているのは、ブルーカーボンの中でも大型海藻によるCO2の吸収・貯留の促進です。

KAISO BANKは、2025年大阪・関西万博「BLUE OCEAN DOME(ZERI JAPAN)」パビリオン「北海道昆布WEEK ~昆布の可能性と未来~(共催:北海道新聞社)」に催事参加し、参画企業と漁業関係者が一堂に会し、藻場再生の現状と課題、地域の未来への展望について語り合いました(「藻場を再生してブルーカーボン推進 全国5カ所の実証実験を通じてビジネスモデル構築へ」)。

全国5漁港で取り組んでいる実証実験では、それぞれの地域特性に応じた技術を開発し、藻場の保全・回復に取り組んでいます。その中で、特に大きな成果が出始めたのが対馬にある豊漁港です。食害対策用に設置した大規模な仕切り網内に藻場の生育を確認できたことから、2026年5月、複数のドローンを使った計測を実施しました。冒頭の写真は、現場に向かう計測船とドローンによる計測の1シーンです。

KAISO BANK代表で三省水工取締役GI推進室長の伊藤敏朗氏

KAISO BANK代表で三省水工取締役GI推進室長の伊藤敏朗氏は、豊漁港での取り組み意義について次のように語ります。「日本にはヒジキ、アカモクをはじめとして約1,500種類の海藻があり藻場を形成していますが、ウニや魚によって食べられてしまう食害で海藻が消失した“磯焼け*2”が発生しています。傾向として、北方ではウニ、南方では魚による食害が多いのが実態です。豊漁港は、特に魚による食害が多いため、仕切り網という網で囲って魚の侵入を防ぎ、この海域で藻場の回復を目指しました。仕切った海域の面積は約0.8ヘクタールで、藻場造成を対象とした仕切り網としては国内でも最大規模の取り組みです。2025年春にこの海域に移植した海藻が着実に広がってきており、今回、その規模を計測しました」。

  • *2 磯焼けとは、沿岸の浅い海でコンブやワカメなどの大型海藻が減少または消失することを指します。海底が岩肌むき出しの砂漠のような状態となり、沿岸の生態系や水産業に深刻な被害を与えています。

仕切り網の外側では魚による食害が発生し海藻が消失した“磯焼け”の状態(左)。仕切り網の内側では海藻の生育を確認(右)

空中、水上、水中の3種類のドローンを使い高精度、低コストで計測

藻場のCO2吸収量を把握・計算するためには、藻場の面積とその高さ、海藻の種類を計測する必要があります。これらの計測技術を担当している三洋テクノマリンの取締役 経営企画本部新事業開発部部長の岡部克顕氏は、「計測をより精度高く低コストで実現するために、ロボットの活用による計測を先行して実施してきました。それが3種類のドローンです」と説明します。この計測によって、CO2吸収量をデータとして科学的に算出することが可能になります。

今回の計測で最初に使用したのは空中ドローンです。「空中ドローンには藻場の面積を測るための撮影用カメラ、または藻場の高さを測るためのグリーンレーザーを取り付けます。今回の計測では撮影用カメラを装着しました」と岡部氏は説明します。 

まずは高所(高度約150m)から広範囲を撮影し、続いて、光の屈折の影響が少ない干潮時を見計らって低空飛行(高度10~20m)し、高解像度の撮影を実施しました。自動航行の場合で、計測時間は高所では6~7分、低空では15分ほどです。

三洋テクノマリンの取締役 経営企画本部新事業開発部部長の岡部克顕氏

空中ドローンによる計測の様子と今回採用した空中ドローン

空中ドローンで撮影した仕切り網全景(出典:KAISO BANK)

次に使用したのは水中ドローンです。この水中ドローンでは、調査したい場所を限定してピンポイントで確認します。仕切り網の外側は海藻が消失した磯焼け状態でしたが、内側では海藻が広範囲に生育していることを確認できました。

水中ドローン本体と計測中の様子

水中ドローンで撮影した画面(船上のモニター画面より)

水中ドローンで撮影した「柱状礁」の海藻生育状況(出典:KAISO BANK)。仕切り網の内側に設置した「柱状礁」に海藻が成長していることが分かる

水中ドローンで撮影した天然岩盤上の海藻生育状況(出典:KAISO BANK)。 仕切り網内側の天然岩盤上にも藻場が形成されていることが分かる

豊漁港では、新たに開発した「柱状礁(ちゅうじょうしょう)」を含む一連の技術によって藻場の回復に取り組んでいます。「柱状礁」は、柱状のブロック4本に海藻カートリッジ(後述)を取り付けたものです。さらに、天然の岩盤にも海藻カートリッジを移植し、藻場の拡大を試みました。こうした取り組みの結果、柱状礁だけでなく岩盤にも藻場が形成されていることを水中ドローンで確認しました。

3番目に使用したのが水上ドローンです。これには、ステレオカメラと音響探知機を装備しています。ステレオカメラを複数台取り付けることで、海藻の種類を自動判別するための正確な水中画像を撮影します。音響探知機は、水中に超音波を発射し、海藻や海底に反射して戻ってくるまでの時間を測ることで藻場の高さを可視化するための機器で、魚群探知機を応用したものです。

水上ドローンと操作の様子。左右に2本突き出た部分がGPS(全地球測位システム)用アンテナ

水上ドローンによる海藻高さの計測状況(出典:KAISO BANK)。柱状礁の上を通過しながら撮影と高さの計測を行う

水上ドローンは、ダイバーによる計測を代替する技術として開発されました。レジャーダイビングと異なり、計測には潜水士の国家資格を持つダイバーしか従事できません。このダイバーによる調査では、計測地点まで船を出す必要がありCO2の排出を避けられません。計測の際には、一般的にライン調査が行われます。これは、水中に一定の長さのロープ(ライン)を張り、それに沿って海藻の種類や生育状況、藻場の高さ等を記録・観察する代表的な潜水調査手法です。このライン調査を水上ドローンが代替することで、CO2排出量を削減するのみならず、低コスト化かつ計測時間を大幅に短縮できるうえに、正確性と安全性を高めることができました。

ダイバーによる計測では長さ100mの計測に1時間ほどかかっていましたが、水上ドローンによる自動航行により数分から十数分の計測が可能になりました。加えて、水上ドローンの両端にはGPS(全地球測位システム)のアンテナを取り付け、撮影した水中画像それぞれに位置情報を与えることで、それを基に正確に水中画像を結合できます。「水上ドローンを使えば、高齢化と若手不足により減少傾向にあるダイバーを手配する難しさは無くなり、危険を伴う潜水作業も回避できます」と三洋テクノマリンの岡部氏は水上ドローンを使うことの利点を説明します。

従来のモニタリングと開発中のモニタリング技術の比較。空中ドローンと水上ドローンを組み合わせることでエコ・安全・高効率を目指す

KAISO BANKでは、こうして収集した藻場の面積と高さのデータをデータベースに投入して藻場の体積を計算します。さらに、撮影した水中画像のデータを独自に構築したAIの学習モデルで解析し海藻の種類を自動判別することで、藻場が吸収するCO2量を正確に導き出します。

1万枚以上の海藻カートリッジに必要な種苗を「つくる」技術を確立

実証実験は、KAISO BANKの4社それぞれの強みを活かし、藻場を「つくる」、「育てる」、「増やす」、「測る」の4段階で進めています。前述したのは、繁茂した藻場を「測る」ための取り組みですが、「つくる」「育てる」「増やす」ことも一体的に進めており、豊漁港では大きな成果が出始めています。 

豊漁港で「つくる」段階を担当しているアルファ水工コンサルタンツの東京本社技術部 プロジェクトマネージャーの寺澤知彦氏は、実証実験の成果を「約20℃の室内で、アカモク、クロメ、ヒジキなどの海藻の種苗をつくります。生育した種苗を専用の海藻カートリッジに取り付けますが、1つの施設で1万枚のカートリッジに必要な種苗をつくることができました。生産能力として3万枚のカートリッジに必要な種苗を生産することができます」と説明します。

「つくる」段階を担当しているアルファ水工コンサルタンツ東京本社技術部 プロジェクトマネージャーの寺澤知彦氏

種苗をつくる施設(左)と各棚に設置されている種苗生産用のボックス(右)。現在、50個のボックスで約1万枚のカートリッジに必要な種苗を生産することができるが、施設としてはその3倍の能力を備えている

この種苗をつくるために地元(豊漁港)の海水を使いますが、元気で生命力の強い種苗を生産するための工夫も施されています。「汲み上げた海水をいったん60℃に温めて24時間以上そのままにしておきます。それにより種苗の生育に悪影響を与える微生物を死滅させることができます。温度が下がり約20℃になったら、種苗を生産する施設に海水を流します」と今回の工夫について寺澤氏は説明します。

汲み上げた海水を60℃で滅菌する装置

その後、ある程度の大きさになった種苗を、海藻カートリッジに取り付けますが、このカートリッジにも改良を重ねてきました。「旧モデルはコンクリート製で重さが300g程度でしたが、新モデルはプラスチック製にして軽量化し、かつ、大きさは数cm四方と小型化し、作業効率性を高めました。当初は透明のものでしたが、海中に入れた際に、カートリッジが見えにくいということから、黒色と白色に改良しました。さらに、環境にやさしい素材として、海洋生分解性プラスチックを採用しています」と寺澤氏は説明します。海洋生分解性プラスチックとは、微生物の働きによって分子レベルまで分解され、最終的に水と二酸化炭素となって自然界へ還る環境配慮型のプラスチックです。

海藻カートリッジの旧モデルと新モデル(左)と、パレットに透明、黒、白の3種類の海藻カートリッジを取り付けて比較したもの(右)

中間育成用の筏(いかだ)で「育てる」

「つくる」の次が「育てる」段階です。前述した海藻カートリッジを専用のパレットに25枚ほど取り付けます。このパレットを沖合の中間育成用の筏(いかだ)に設置します。筏の外周は網で覆われており、魚の侵入を防ぐ構造になっています。

中間育成用の筏(左)と育成した海藻(右)

ここで、季節に応じてアカモク、ヒジキ、キレバモク、クロメ、ワカメなどの種苗を育成管理することで、食害の影響を受けずに移植に適したサイズまで効率的に育てることができます。

この「育てる」というプロセスの中で、筏を川に近い沿岸域に設置した場合、流入する土砂による課題が浮上したため、その解決にも挑んでいます。日建工学の取締役 技術部長 兼 カーボンニュートラル推進室長の西村博一氏によると、「豪雨によって河川から大量に流入した土砂が種苗を覆ってしまうと、枯死することがあります。そこで、土砂がたまりにくいようなカートリッジの構造の研究も進めています」と、さらなる改良にも取り組んでいると説明します。この土砂流入問題があったため、豊漁港では現在は筏を沖合に設置するなど、あらゆる対策を講じています。

日建工学の取締役 技術部長 兼 カーボンニュートラル推進室長の西村博一氏

地元の協力なくして実現できなかった藻場を「増やす」

中間育成によって育てた海藻を「増やす」のが次の段階です。豊漁港では、前述したように仕切り網を使って囲った海域で藻場を「増やす」に取り組んでいます。この「増やす」ということが非常に難しいといわれています。日建工学の西村氏は、「自然が相手なので、人間ではコントロールできない海水温の上昇や台風等の災害もあり、なかなか藻場を増やせないというのが課題です。地元の方々の協力なくして藻場を増やすことはできません」と語ります。

具体的には「仕切り網は、漁師の皆さんが使い古した網を持ち寄り、それらをつないで作っていただきました。継続して維持・管理していただいています」と打ち明けます。

三洋テクノマリンの上級理事技術顧問の五味久昭氏は、「海流や水質のことを分かっているのは地元の漁師さんです。海藻を移植する際の最適地を見つける上で、地元の方々の協力は欠かせません」と説明します。

さらに五味氏は、「地元の方々の知見を踏まえて藻場造成の適地を探す方法を科学的に整理して、多くの方が藻場造成を行えるようなガイドラインを作ることをKAISO BANKの中で行う予定です。」と明かします。

三洋テクノマリンの上級理事技術顧問の五味久昭氏

豊漁港のある豊地区では十数年以上前から、藻場の保全・回復に取り組んできたという経緯があります。その活動を主導しているのが豊地区藻場保全組織(豊漁組)です。代表を務める須川英之氏は、「13年前、磯焼けの進行で藻場が衰退していくなか、海藻の種だけは採取し、大学の研究室に冷凍保存しておくことに決めました。それを2025年に開封して、今回の取り組みを通じて種から育ててみました。今回の計測で見たアラメ(コンブ科の海藻)がその現物です。大切に保存していた種から再生できたことに感激しています」と、想いを語ります。

上対馬町漁業協同組合代表理事組合長の八島康平氏

藻場の保全・回復は、地元の漁業者にとっても願ってもないチャンスです。上対馬町漁業協同組合代表理事組合長の八島康平氏は、次のように想いを語ります。「自分が幼少期から学生時代までは、サザエが邪魔になるぐらいたくさん獲れていましたが、藻場が減りサザエやアワビも減ってしまいました。今回のKAISO BANKの藻場を回復する取り組みが単発で終わるのではなく永年に続く体制にしていきたい。そのためには我々地元も協力します」と、語ります。

さらに、「平成元年には1,100人居た組合員は、高齢化が進み、現在は320~330人ほどに減少しています。藻場の保全・回復を通じて漁業を活性化し、組合員を増やすと共に、地元の飲食店の繁栄にも寄与したいと考えています」と続けます。

他の漁港に種苗を無償提供し、社会実装へ着々

KAISO BANKは、GI基金事業の成果を生かして新たな取り組みも始めています。その1つが、生産した種苗の無償提供です。「水産庁の呼びかけもあり、藻場の保全・回復に取り組む自治体や漁業者から種苗を提供してほしいとの問い合わせが増えています。すでに全国15地区の漁業者や団体に海藻カートリッジの無償提供を始めており、約1,150枚を出荷しました。今後は現場からのフィードバックをもとに、有効性の検証とさらなる改良に努めていきます」とKAISO BANK代表の伊藤氏は話します。

藻場を「測る」ことによって、藻場によるCO2の吸収量をデータとして科学的に算出することができれば、ビジネスとしてさらなる飛躍を図ることができます。具体的には、藻場のCO2吸収量を基にした「JブルークレジットⓇ制度」を活用し、クレジットとして民間企業に販売することも視野に入れています。伊藤氏は、「展示会に出展して顧客の声を聴きながらどういうところにニーズがあるのかを確認しているところです。例えば、CO2排出量を大幅に減らしたいと考えている電気事業者や商船会社などが考えられます」と説明します。

一方、海外展開について西村氏は、「ASEAN諸国にニーズがあるのではないかと考えています。ブルーカーボンはまだまだ言葉は聞いたことがあるというくらいの方が多いのが現状ですが、磯焼けの問題は世界で起きており、いずれニーズが出てくるでしょう。まずは日本で実績を作り、海外展開できるようにリサーチしていきたい」と想いを語ります。

地域特性に応じた藻場造成事業が着々

今回、対馬での取り組みを取り上げましたが、他の4漁港でも着実に実証実験が進展しています。

4漁港における実証実験の取り組み。左上は北海道・神恵内(かもえない)漁港、右上は岩手県陸前高田市只出(ただいで)漁港、左下は山形県鶴岡市小波渡(こばと)漁港、右下は大分県津久見市保戸島(ほとじま)漁港

北海道・神恵内(かもえない)漁港ではコンブを対象にして、柱状ブロックを設置しました。ウニによる食害が多いため、ウニ避け対策を実施しています。広大で平坦な海岸線であるため、冬場の波浪環境の影響もあり、大規模に移植する際の適地の選択が課題となっています。

岩手県陸前高田市只出(ただいで)漁港ではアラメやアカモク、ワカメ、コンブを対象にして、柱状ブロック6基を西寄りの入り江に設置しました。砂地/転石帯でウニが集中しているため、ウニの駆除を2〜3カ月周期で実施しています。

山形県鶴岡市小波渡(こばと)漁港ではワカメやアカモクを対象にしています。海藻の胞子が着生する基質がない砂地のため、プレート状の基盤を敷き詰めていますが、砂・泥・波の影響があるため、離岸堤の背後に設置して移植しました。食害は相対的に弱いですが、砂・泥・波対策が継続課題となっています。

大分県津久見市保戸島(ほとじま)漁港ではクロメを対象にしています。急深地形で棚幅が狭い上に、水深が16〜20mと深いので背の高い板状ブロックを設置していますが、魚類による食害が多く、網掛け防除等の対策を検討中です。

ブルーカーボンがプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)の課題に貢献

前述したように、全国5漁港での実証実験は、地域の特性に合わせた形で社会実装へ向けて着実に進展しています。

NEDOの山田恭平主任(フロンティア部GI農水チーム)

こうした日本の取り組みについて、NEDOで本プロジェクトを推進している山田恭平主任(フロンティア部GI農水チーム)は、次のように説明します。「海藻に関するブルーカーボンの方法論を最初に開発したのが日本だと思います。国際機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)に海草・海藻藻場によるCO2の削減状況を最初に報告したのも日本です。しかも、ブルーカーボンはネガティブエミッション*3の数少ない技術の1つです。プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)*4において気候変動と生物多様性の喪失が高リスク領域として問題視される中で、ブルーカーボンは温暖化を防止し生態系を保全することができるという両方の特性を持つ点で優れていると考えています」。

  • *3 ネガティブエミッションとは、大気中のCO2などの温室効果ガスを回収・除去し、地中や森林、海藻などに貯留・固定化することで、排出量よりも吸収量が上回る「マイナス」の状態を生み出す技術や取り組みの総称です。
  • *4 プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)とは、人類が地球上で安全に生存し、持続的に活動できる限界領域のことです。スウェーデンの環境科学者ヨハン・ロックストローム博士らが2009年に提唱した概念で、この限界を超えると地球環境が取り返しのつかない不可逆的な状態に陥る可能性があると警鐘を鳴らしています。

こうした背景を踏まえて、「ブルーカーボンとして、藻場の保全・回復を、「つくる」、「育てる」、「増やす」、「測る」の4段階を一気通貫で実施しているのは国内外でもKAISO BANKだけだと思います。藻場の生育環境や衰退要因は場所によって様々で、これをすればどんな藻場でも回復するという便利な単一のパッケージはありません。そこで、環境の異なる5漁港で実証を行い、それぞれに応じた技術を開発していることも強みです。しかし、衰退した藻場をいちから造成する場合、「JブルークレジットⓇ」だけで資金を賄うのは至難の業です。今後、さらなる低コスト化を目指すとともに、単なるCO2吸収・削減に留まらない藻場の価値にも焦点を当てて、ビジネスへと繋げていきたいと考えています」と、プロジェクトの意義と目指すべき方向について説明します。

藻場の回復を着々と進めている今回の豊漁港の取り組みは、地域の多くの方々の協力によって成り立っています。藻場のCO2吸収によってカーボンニュートラルを目指すこのプロジェクトによって、それを定量化する計測技術の基礎を確立することができました。
NEDOとして、他の漁港にも今回開発した技術を応用し、さらなる実証を進めていきたいと考えています。

KAISO BANKのメンバーと地元の漁業関係者の皆さん。一致団結して、藻場の回復に取り組んでいます。前列の右から2番目が、本文中で紹介した豊地区藻場保全組織代表の須川英之氏。後列右はNEDOの山田主任(フロンティア部GI農水チーム)

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